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→便通は体調のバロメータ - 体は“空(から)だ”・3

現代医学では、たとえば高血圧と胃潰瘍と診断された場合、高血圧は高血圧、胃潰瘍は胃潰瘍と、それらの相互関係をあまり念頭に置くことなく、それぞれの病気に対する薬剤を選択します。

その結果として、両者の薬剤を組み合わせることになりますが、処方する以前の段階から、組み合わせ方を慎重に考えなければならないという、強い自覚があるわけではありません。
処方した後も、このように組み合わせたという、はっきりとした意識はあまりありません。

高度のレベルで行われる特別な場合や、副作用など要注意の場合を除けば、組み合わせ方自体に対するルールや工夫が、必ずしも最初からあるわけではありません。
薬剤の効能がより微細なレベルに関わってくるようになれば、それとも体全体で論じられるようになれば、いずれはそのような配慮が必要になってくるでしょう。
一つの生薬だけにも多数の成分が含まれているわけですから、まして生薬をブレンドした漢方薬には、主要な成分だけではなく、もっと数多くの成分が含まれることになります。

このような決定的に異なる側面を有するために、現代医学と漢方医学とを不用意に比較することは、軽率であると指摘されかねませんが、現代医学を念頭において、漢方医学を類推すると、次のようになります。 

漢方医学の病態の把握の仕方が、鍵と鍵穴のように、原因と結果という一対一の因果関係だけで完結するのではなく、様々な要因の相互作用の中から、ある一定の病態や症状が現われてくると考えていたことが推量されます。
便秘という症状も、単一の決まった原因のみによって起きるだけではなく、直接関係ないように見える、複数の要因や種々の状況の中から生じて来ると考えていました。
そこで一つの症状に対しても、数多くの漢方薬があるわけです。

医師や薬剤師にとっては、証と呼ばれる選択基準にしたがって、その中から最適の漢方薬を選択することが、腕の見せ所となります。

それでは証とは一体何でしょうか。

漢方薬は二種類以上の生薬を、組み合わせてブレンドした薬です。
それでは漢方薬は、いろいろな生薬の効能を、ただ足し算したものでしょうか。
そのような簡単な話ではないために、証が考案されたと推量できるのではないでしょうか。

証は、その漢方薬がどんな病状に有効であるかを示しています。
裏を返せば、漢方薬を組成している、それぞれの生薬がどのような効能を示しているか、組み合わせた結果、漢方薬全体としてどのような病状に有効であるかということに基づいて、証が成立していることを意味しています。

また漢方薬の効能書きに便秘という表現がなくても、便通以外のその他の体調がととのうことによって、便秘が軽快することもあります。
便秘そのものに効果のある生薬がはいっていない場合であっても、全身の状態を調えることによって、おのずから大腸や胃腸の働きも是正されて、便通がつきます。

人によっては、たとえば蕁麻疹で漢方薬をのんだところ、思いもかけず便通がよくなった。
さては、これまで気がつかなかったけれども、今までの自分は、いわゆる便秘であったのかもしれない、などという話になることも珍しくありません。

このことは、必ずしも便通に限らず、その他の様々な不定愁訴についても言えることです。
病因と病状という、一対一の因果関係の明白な現代医学からみたとき、漢方薬の作用はこのように多様に感じられ、科学的な説明が不可能ということになりやすいといえます。
個々の生薬の主要な作用が判明したとしても、方剤全体の効能としてはある種の不可解さを伴い、漢方は非科学的であるという印象を与えてしまいます。

現在では、代表的な漢方薬や生薬については、成分や薬理効果が明らかにされているために、必ずしも非科学的であるというわけではありません。
しかしだからと言って、漢方薬全体として、あるいは漢方という古代医学そのものが、現代科学によって全面的に解明され、認められたというわけでは決してありません。


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→便通は体調のバロメータ - 体は“空(から)だ”・2

胃や腸だけではなくそれぞれの臓器には、それぞれの固有の運動やリズムがありますが、それぞれが独立して勝手に動いているわけでは決っしてありません。
何らかの形でお互いに影響を与え合って、全体として体の状態を調えている。そのように考えるのが自然です。

体には胃腸や肝臓、腎臓など各種の臓器や組織の他に、脳神経系統、血液循環系統、内分泌系統、あるいは免疫系統など、体全体を統一し連携するシステムが存在します。

漢方では、血液循環や体液循環を含めて、気血水(きけつすい)というシステムが、全身を連絡し合っていると考えました。


便秘に処方される漢方薬には、大黄甘草湯(だいおう・かんぞうとう)、調胃承気湯(ちょうい・じょうきとう)、大承気湯(だい・じょうきとう)、通導散(つうどうさん)などがあり、その種類は少なくありません。
これらの漢方薬の中から、証(しょう)という診断基準に沿って、それぞれの病状にあった漢方薬が選択されます。
漢方薬は、方剤(ほうざい)とも呼ばれます。
便秘を改善する、これらの漢方薬は瀉下剤(しゃげ・ざい)です。

このように便秘という一つの症状に対して、数多くの方剤が存在するのは、一体どのような理由からでしょうか。
それぞれの漢方薬を構成している、生薬の種類や数や量が異なるからですが、なぜそのような違いがあるのでしょうか。

便通を改善する生薬(瀉下薬、しゃげやく)として、大黄(だいおう)と番瀉葉(ばんしゃよう、センナのこと)が特に有名です。
その他に、芒硝(ぼうしょう)、麻子仁(ましにん)、蜂蜜などに、瀉下(しゃげ)作用があるとされています。
  
現代医学的な立場から見れば、血圧などの薬剤と同じように、瀉下薬である大黄やセンナを単独に服用して、便秘が解消されれば、それで治療が完了します。
実際に街の薬屋さんの店頭では、センナなどの生薬が便通の薬として、単独で売られているのをよく見かけます。

医学的には、降圧剤や抗生物質など現代医薬品は、基本的に単一の化学成分だけが含まれています。
これに対して、生薬は天然の物質であり、主要な成分の他に何種類もの化学成分を含んでいます。
(生薬の効能も一種類に限らず、全く関係のないような何種類かの効能を表わすことがしばしばあります。)

漢方医学では、これらの主たる生薬を中心に、それ以外の生薬が組み合わされて、瀉下剤ができあがっています。
先に挙げた瀉下剤はいずれも、大黄と芒硝の他に各種の生薬を配合した漢方薬です。
大黄と芒硝のそれぞれの配合量も少しずつ異なり、その以外の生薬の種類も重量も違います。

それではなぜこのように異なるのでしょうか。

それは便秘という主症状が共通してはいても、その周辺の症状や状態が異なると判断しているからです。
このような考え方から、便秘を目標として治療を進めるにしても、組み合わせなければならない、生薬の種類、数、量が必然的に異なってきます。

→便通は体調のバロメータ - 体は“空(から)だ”・4へ

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→便通は体調のバロメータ - 体は“空(から)だ・1”

命は昼夜わかたず一日中働いています。ところがよく見てみると、命の働きが特に大きく働く時間帯があることに気がつきます。それは夜間睡眠中です。

夜ぐっすりと眠れば翌朝は爽快です。
私達が安閑と眠りこけている間にも、体は体自身を大掃除して老廃物を外に出し、体を空っぽにするために一心不乱に働き続けています。
私達の体は、私達にとって文字通り「縁の下の力持ち」です。

どのような状態を便通が困難であり、便秘であると判断するかは、人によって必ずしも一定ではありません。
排便後の状態を、毎回毎回しげしげと観察する人も少ないと思います。便通に関する話は、よほど親しい間柄であっても、具体的な話題にはなりにくいものです。医学的にも便秘の正確な定義は下しにくいとされています。
自分がどんな便通状態にあるか分からないまま、毎日を過ごしている人もあんがい多いのではないでしょうか。

少なくとも三日以上排便がない、便が硬い、ころころとした便が出てくる、お腹がはったりゴロゴロする、便秘と下痢が交互に起きる、下痢ばかりが続いている。

このような場合、現代医学的な病気が大腸などにあるかないかは別にして、漢方医学的には明らかに異常である。体調が良くないと判断されます。

アトピー性皮膚炎などが悪化するケースについて調べてみると、便秘傾向にある場合がしばしばあります。さらにさかのぼって尋ねてみると、本人の気がつかないうちに、実質的な睡眠不足に陥っています。このことは、過労や夜更かしや無理な仕事振り、ストレスなど、大腸の働きが日々の生活状態を確実に反映していることを暗示しています。

このように便通は体全体の状態、つまり体調の一環として表現されることに気がつきます。便通に限りません。体調が乱れたり悪化すれば、

肌がかさかさする
何となく腰が重い、痛い
肩などの筋肉が凝ったりはったりしている
足がむくみやすい
疲れ気味
気分が乗らない

最初はこのような何気ない違和感として表れます。

病気ではありませんので、生活に支障を来たすことはほとんどなく、大過なく毎日が過ぎていくように見えます。ところが塵も積もれば山となり、やがてはイエローカードとなり、レッドカードが点滅します。
もし体調が悪いことをはっきり感じるようであれば、

オーバーワークやストレスなどの負担が相当長く続いている
かなりハードであった
知らず知らずのうちに疲労が重なってしまった

このように、自分自身の体力や気力以上の負担がはっきりあったことを示しています。
時には駅のプラットフォームで気を失ってしまい、「気がついたらベッドで点滴を受けていた」、などということにもなりかねません。

便通がすっきりしない日々が続くようであれば、生活に無理が来ていないかどうかを、振り返ってみる必要があります。

→便通は体調のバロメータ - 体は“空(から)だ”・3へ

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【3】 便通は体調のバロメータ - 体は“空(から)だ”

体は「からだ」と読みます。
体にとっては、「からだ、つまり”空だ”。」
体自身にとって理想的な状態とは、体の内部が空っぽの状態です。

口から入って来た食べ物飲み物は、昼間の活動によって使われ、その過程で生じた不要な物質は、夜中に排泄物としてまとめられて、翌朝、体の外に全部出してしまいます。 
朝に限りませんが、トイレに行くことは、体にとって不可欠のことです。体内に不要な物質を、溜め込んでおくことはできません。
体自身が正常に働くためには、いらなくなった物質のすべてを絶えず排泄して、その内部環境をある一定の範囲に、いつもキープしておく必要があります。
家屋で言えば、毎日怠ることなく掃除や整理整頓を行い、快適な住環境を確保しておきたいものです。


いつものことなので、あまり気にすることもありませんが、便通がすっきりとつけば、気分は爽快です。

毎日が忙しくて、なかなか一息つく余裕がない
だいぶハードなエクササイズを始めた
このところストレスばかりで緊張の連続だ
途中で何回も目が覚めて、良く眠れなかった
寝る時間がとても遅かった

こんな朝は、一般に便が切れ切れであったり硬かったりして、便通が今一つ、といったことをしばしば経験します。日頃から胃腸の丈夫でない人は、反対に便がゆるくなったり、下痢になったりします。
朝から晩まで便通が気になって仕方がない、中にはそんな人達もいます。

ちょっとした体や心の異変が、胃腸の蠕動運動に影響を与えます。ストレス性の胃潰瘍はつとに有名ですが、大腸の状態は便通に表れます。
便通は全身の状態に、その時々の生活状況に大きな影響を受けると考えられ、もう一つの体調のバロメータです。

食べたり飲んだりした物は、体の中で使われるととも、不要になった物質は体の外に排泄されます。
疲れた体は疲れる前の、元気な状態にまで回復されなければなりません。

病気があればもちろんのことですが、このように病気の有る無しにかかわらず、体はいつも最良の状態に維持されるという働きがあってはじめて、健康に生存することが可能となります。
そのためには、体内に生じた不要な物質、残存した老廃物を全てスムーズに対外に排泄して、いつも空っぽの状態にしておく。

つまり一定の良好な内部環境を維持し続けることが大切です。
たとえば腎臓の機能が低下して腎不全に陥った場合、透析などの治療を行います。血液中にたまってしまった不要な物質を放置しておくと、命に関わってくるからです。

以上のように、飲食することによって、体外から体内に取り入れた飲食物は、体内で必要な分だけが消費され、余った部分や消費される過程で生じた不要な物質は、尿や便や汗、呼気などにかえて、体内から体外に出してしまうという基本的な仕組みがあります。

このような仕組みがあってはじめて、健全に生きていくことができる。古代人はこのような働きと力をこそ、命として認識しました。

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→朝食を取る・1

口から入った飲食物は、食道を通って胃袋に納まり、胃の蠕動運動で消化を受けながら、十二指腸に送られます。小腸の運動には、分節運動や蠕動運動などの各種の運動が知られています。
蠕動運動とは、小腸を輪状に走っている筋肉が収縮して、そのくびれが肛門に向かって移動する運動です。どの運動も、とても細やかで繊細な動きです。

小腸の始まりである十二指腸には、膵液と胆汁が分泌されます。膵液は膵臓から、胆汁は肝臓で作られて胆嚢から、十二指腸に向かって分泌され、消化吸収に関連する各種の消化液として働きます。

十二指腸に続く空腸で、摂取された飲食物の大半が消化吸収されます。
吸収されずに前方に向かって送られていく飲食物も、必要に応じて吸収され、最終的に不要となった残渣だけが、便として体外に排泄されます。

古代医学である漢方では、摂取された飲食物が小腸で消化吸収を受ける過程で、気(き)と呼ばれているエネルギー(気エネルギー)が発生し、経絡(けいらく)という気の流路によって全身に送られると考えました。
胃腸に留まらず、消化吸収に関わるすべての器官、消化器官群を脾(ひ。現代の脾臓とは異なる)と総称しました。
脾は狭義には膵臓をさしますが、このように広く解釈することによって、体の仕組みが一層明確になります。

お腹が空いたら食べて、喉が渇いたら水や飲み物を飲む。
当たり前のことですが、人体の仕組みの基本です。

このような当たり前の生理現象を、体の基本となる仕組みとして把握し、これらを発展させることによって、漢方という古代医学が誕生しました。

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